伝承とART。
20250509
とある職人の方が「昔からの技術は代々約30%ずつ減って伝わるから、昔の職人にはどうしてもかなわない。」と言っていた。なるほど、実際そんな感じもする。けれど、その間に新しい技術も出てくるので一概に昔のほうが良いとは言い切れず、難しいところだ。
コーヒーの現場はどうだろう。生産者は僕がコーヒーに携わって約20年、ナチュラルやウオッシュトだけの精製に限らず多種多様な生産技術が確立されてきて、めざましい進化と思う。焙煎はどうだろう。最新の焙煎機はドラムの回転数を随時変えられたり、ガスだってデジタルで管理でき、必要とあらば焙煎ログも自動的に残ってゆく。焙煎機メーカーの進化は特にこの数年めざましい。(正直欲しいです)
さて、焙煎技術はどうだろう。これは何とも言い難い。良いコーヒーが増えたので、ある程度は美味しく焼けてしまうからやっかいである。データを元にすれば再現性は上がるけれど、同じ環境で焙煎できるコーヒーは皆無と思う。その日のコーヒーの声を聞きながら、「今」のポテンシャルが出切るように焙煎やブレンドをし、毎日地道に改善を繰り返していきたい。
土建屋時代、知り合いの庭師が灯籠を立てる工事を手伝ったことがある。僕は土建屋なので水平器を使って垂直をみていたところ、「ゆうくん、人間の目が一番正しいけん。水平器いらんよ。」その後、ものすごい時間をかけて何度も何度も360度見渡し、遠目から近くから眺めては修正していた。人間の手が入れば入るほど温かみが出るからと言っていた。砥部焼の陶芸家さんも、毎回同じものができるとしたら、窯出しをドキドキして待たないはずだ!
そうか、コーヒーもARTかもしれないな…ま、まぁええがい。ではでは、良い週末を。
[写真は香川県善通寺の金堂(1699)]