煎りたての罠。
焙煎したての新鮮なコーヒーを召し上がれ。お湯を注ぐとぷっくり膨らむのが新鮮さの証。煎りたて・挽きたて・淹れたて…とコーヒー店等で目にする方も多いのではないかと思います。確かに焙煎から4ヶ月も5ヶ月も経ってしまったコーヒーより、焙煎したての新鮮なコーヒーのほうが良いのは間違いありませんし、挽きたての香りは最高の癒やしの香りなので、鮮度の良いコーヒーを買っていただきたいと考えていますが、今回のJOURNALでは「コーヒーの鮮度と味わい」の関係性について少し深堀りしてみますね。
まず焙煎を科学的な側面から。生豆を煎る過程で発生する炭酸ガス(二酸化炭素)が焙煎豆の繊維の中に残ります。豆を挽き、お湯をかけたら豆が膨らむのは炭酸ガスが揮発している現象です。この炭酸ガスは生産国、焙煎度合い、季節等にもよりますが、焙煎後2~3週間くらいかけてゆっくりと揮発していきます。焙煎したては炭酸ガスが一番多く含まれている時であり、時にこのガスが邪魔をすることで、フルーツの風味やお花のような甘い香りを遮ってしまうことがあります。例えば独特の柑橘を想わせる甘い酸味でファンの多いケニアコーヒーは焙煎後4~5日経たないと本来の甘さやフルーツ感が出てこないことがありますし、大人気エチオピアのモカコーヒーも焙煎後10日くらいしてベストバランスな美味しい抽出ができることもしばしば。
したがいまして、焙煎豆の自然なガス抜きは大切。鮮度は大切な反面、新鮮すぎるのも本来のポテンシャルが出ていない場合がある、というお話でした。(最新のエスプレッソマシンは強制ガス抜き機能が付いているものもあるほど。)最初は少しシャープな酸が感じられる豆でも4~5日ほど経つと甘くまろやかになることもあり、毎日の変化を発見したり、楽しんだりしていただけたら嬉しいです。
挽いて買われる方は、ガスが揮発するスピードは早いのですが、香りも同時に早く飛んでしまいます。また挽き豆はコーヒーの一番の大敵である湿気を吸いやすくなり、酸化するスピードも格段に早くなるため、飲む分量の豆だけを挽くことが大切です。豆のまま買うということは、そのコーヒーをゆっくりと変化をも味わい尽くせる、とも言えますね。長文になりましたが、おすすめはおよそ1ヶ月くらいで飲み切る量を豆のまま買う、ということになるでしょうか。こうして味わいが花開いてゆく過程もコーヒー生活の楽しみのひとつになればという願いを込めて…ともあれ、今日も明日もENJOY COFFEE !