カップを取る。
焙煎をした後、必ず行う[カッピング]と呼ばれる、いわゆるテイスティング。お店で見たことがある方もいるかもしれませんが、挽いた豆に熱湯を注ぎ入れ、上澄みを取った後すすって味をみていく作業。これは何をみているのかと言うと、ずばり[焙煎エラー]の有無です。
焙煎エラーについては、大まかに
[想定したフレーバーが損なわれていないか] 濁っていて口当たりも悪い・酸味だけが立つ
[焦げやロースト臭が強くないか] 苦い・後味が悪い
[芯残りの焙煎ではないか] ポップコーン臭がする
このあたりを熱いときから冷めるまでじっくりと観察していきます。
では、具体的にこれらエラーの味を的確に判別するためには、実際にエラーの味を数経験することが大切だと思いますが、これらは微々たるエラーの場合があったり、経時変化で良くなったり悪くなったりすることもあり、プロの焙煎士でもかなり難しい部分だと思います。
もしかしたら[美味しくなあれ!]と意気込んで焙煎しているのを想像されたと思うのですが、実のところ、現場は全くそうではないんです。誤解を恐れず言うと焙煎歴18年の今でも[失敗したくないなぁ]との一心です。心境としてはネガティブでセンシティブ。西条のロースタリーで焙煎に遭遇されたとき、睨みをきかせていたらすみません(笑)。
反対にコーヒーのいいところを見つけるのは買付時のカッピングです。もちろんネガティブな面も最初にみますが、その後は、どちらかと言うとポジティブチェックです。甘さ、酸の質、口あたり、フレーバー、そして全てを際立たせる透明感をみていきます。そうして、素晴らしい!と買い付けたコーヒーを、わざわざ四国まで持ってきて失敗作を出すわけにはいきません。日々の流れとしては、生豆買付時のカッピングからはじまり、日本へ入って来てからの味の変化も確かめつつ、最終的にお店の焙煎で確認し微調整し続ける、という地道な工程を踏んで店頭に並べています。
カッピングから始まり、カッピングで終わる。すべてカッピングカップの中に答えがあります。コーヒーの世界ではこれら一連を[カップを取る。]と言います。